【遊技機を影で支える「匠」】プロジェクトD~挑戦者たち~ 『デザイングループ』
皆さま、こんにちは。
今回のプロジェクトDで取り上げる部署は「デザイングループ」です。デザインは、製造業者(メーカー)にとって、どんな業種であれ切っても切り離せない必要不可欠なものです。
パチンコ・パチスロにおける「デザイン」とは、どんなものか? 仕事の内容やその深いこだわりまで、遊技機デザインの世界に踏み込みます。
第四回「デザイングループ」
(ナレーション)Daiichiで「デザイン」といった時に、いま真っ先に思いつくのが最新枠『imagination+(イマジネーションプラス)』ではないだろうか。
筐体を覆うようにランプを搭載した斬新なルックスはインパクト抜群だ。Daiichiの標榜する「パチンコらしくないパチンコ」を具現化したともいえる。
『imagination+(イマジネーションプラス)』は形状としてはシンプルな部類。だから「手が込んでいない」と思われがちだ。また、パチンコユーザーからは「光る便器」などと揶揄もされた。
しかし、コンセプトを完全に表現するために、細部にわたってデザイン的なこだわりが散りばめられている。
ランプが光る時に影ができないようにデザインされた留め具や搭載物の配置。LEDがムラにならず全体的に照らされるような計算されたレンズ構成。叩いたり引っ張っても壊れないといった耐久性と意匠の両立。下皿に手を入れやすいかなどの機能性との兼ね合い。
ユーザーが直接意識しない部分でも、デザイン(見た目)の配慮がほどこされている。
「賛否が起こらないデザインは面白くない。全社一丸でこの筐体を世に送り出せたのはDaiichiの意思の表れでもあった」と取材に対応してもらったYさんは言った。
コンセプトをデザインした『ひぐらし』
機種によっていろいろな見方、さまざまな方向性があるなかで、プロジェクトで決まったコンセプトをデザインに落とし込んだ一番わかりやすい例が『CRひぐらしのなく頃に叫』だとYさんは言う。
その最たるものが「盤面デザイン」だ。
初代「CRひぐらしのなく頃に頂」が好評を博しており、前回を踏襲した、盤面にキャラクターやタイトルを取り合わせる従来的なパチンコ盤面でも問題はなかった。
しかしそれでは、液晶演出で展開される恐怖やドキドキ感が損なわれてしまう怖れがある。追いつめられる緊迫した液晶演出、当たりかハズレかを決める最大の山場で、ふとほんわりした女の子キャラの意匠が視界に入るのはどうなのか?
『CRひぐらしのなく頃に叫』には狂気と恐怖という強烈なテーマがあり、演出全体にある主観視点での見せ方が盤面デザインでも表現された。割れたガラス、あるいは鏡。
実際にハンマーで鏡を割ってできた形状をモチーフに、破片をつなぎ合わせて構成していった。ガラスのエッジ感・鋭さが負のイメージを連想させ狂気や恐怖につながる。
ここからの落とし込みにも苦労がたえない。ガラスや鏡をモチーフにしているので盤面は透明の素材となるが、ビス・基板・補強用の板など機能的に必要のある部材を隠すのがむずかしくなる。そこをデザイン的にカバーするのも腕の見せ所だ。
例えば基板。
LEDや電子回路を裏側に実装して見えないようにする。磨りガラス風にして印字を見えづらくする。基板形状とヒビの位置も揃えられており、ユーザーはそこに基板があるとは感じない。そうした細かなラインの一本一本に至るまでデザイン意図が込められており、統一感や世界観を壊さないような工夫がなされている。
光もデザインの重要な表現
『CRひぐらしのなく頃に叫』には3層の導光板を使った新しい光の演出が採用されている。この導光板もデザイングループによる仕事。
導光板は、方向などによって2パターンの絵を出現させることができるので、計6パターンの演出を発現できる。液晶演出を補佐したり、単独でインパクトのある演出を出したりと用途は多彩だ。
本機でいえば、奥2枚がノイズやビームといったエフェクト系に対応していて、汎用性の高いコンビネーションが深い表現の幅をもたらす。
何度も試行錯誤し、ガラス割れやビームの最適解を探っていくさまは、デザインというより開発に近いかもしれない。Yさんが言うには、Daiichiのデザイン部は目に映るハードのデザインすべてをこなしているそうだ。光、役モノもそう。
導光板の演出で一番インパクトのある竜宮レナのアップ図案。
特に怪しく光を放つ目は『CRひぐらしのなく頃に叫』のコンセプトが凝縮されたような力強さも感じる。
通常なら目が中心にくるところではあるが、先ほど述べた「光」の表現を活かすように、目の位置を少しずらした。ナタ役モノに仕込まれた正面向きの発光ランプが瞳孔と重なるように。
狙ったデザイン。アイデアの具現化、だ。企画サイドで持ちあがったレナの目でユーザーをドキッとさせるという発想をデザイン的な工夫で魅力を強力にする。パチンコデザインにおける面白さのひとつでもある。
楽しく打ってもらいたい」ただそれだけ
YさんはDaiichi一筋。新卒採用から14年の月日が流れたが、パチンコ・パチスロを取り巻くデザインは日々変わっていったという。小さかった液晶が今では19インチ。毎回ドキドキするような役モノも作られてきた。
担当した役モノで、特に印象に残っているのが『CR石川さゆり あなたのために歌います』だそうだ。
本物の桜吹雪が舞うギミックを搭載していたが、花吹雪の形状が平らだと静電気でガラスに張り付く、折り曲げすぎると今度はうまく飛ばないと、いろいろ苦労したようだ。試行錯誤を経てなんとか送り出せた桜吹雪ギミックをユーザーの方が楽しそうに打つ姿に、モノづくりの得難い喜びを感じたという。
いまも役モノを飛び道具的に活用する流れがないわけではないが、Daiichiはどちらかといえば『ひぐらし叫』のように機種全体でユーザーに伝えたい、訴えかけたいといった傾向にあるようだ。
規則や内規、遊技機としての運用面、実用性など業界ならではの専門知識も必要とするパチンコのデザイン。版権モノを多く扱うなど、時流や世間の流行にもアンテナを張る。わかりやすさというのも重要だ。
CR天下一閃の盤面デザインは、時事的な由来に加え、一発機の当落までの流れをよりわかりやすく伝えるために選んだモチーフとのことだ。
そして、日々デザインを行う上で大事なことはと聞くと、ユーザーの方の心をいかに動かせるかの自問自答だという。この役物デザインは普段味わえない驚きを感じるか、また座りたくなる刺激に繋がっていくか。Yさんが常々振り返るようにしている事柄。
Daiichiデザイングループが手がける新しい切り口の表現に驚いていただき、本当に楽しく打ってもらうために、今日もデザインと向き合っている。
©2006竜騎士07/ひぐらしのなく頃に製作委員会・創通
©2007竜騎士07/雛見沢御三家
©2009竜騎士07/雛見沢御三家
©さいゆうめい・星野泰視/講談社
©2012春日みかげ・SBクリエイティブ/織田信奈の野望制作委員会