【規則改正案の内容に迫る!】プロジェクトD~挑戦者たち~ 『申請管理部』後編
皆さま、こんにちは。
今回のDaiichiジャーナルは『プロジェクトD~申請管理部~』の後半です。
少し前から噂があった「パチンコ・パチスロの規則改正」について重大な進展があったので、その規則改正を巡る話題を中心に進めていきたいと思います。
パチンコ・パチスロの未来はどうなるのか?必見です。
13年ぶりに規則が変わる!
(ナレーション)2017年7月11日、日付が変わった瞬間に警察庁から遊技機業界に関するパブリックコメントが公示された。
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の一部を改正する規則案」に対する意見の募集について
パブリックコメントとは、行政機関が実施しようとする政策について、あらかじめ国民から意見を聞き、それを意思決定に反映させるために行う制度だ。
規制の原案を公表し、広く一般から意見を求めることで、正当性や公明性を打ち出すことができる。つまり、「パチンコ・パチスロに関する規則を変えようと思っています。その内容はこうですが、何か意見はありますか?」ということだ。
案が出されたといっても、規則改正はまだ本決まりではない過程の話。
この発表を受け、その具体的な内容、そして変化するパチンコ・パチスロ機の未来について申請管理部・部長のSさんに改めて話を聞いた。
Sさんの解説によると今回の改正案は出玉に関することがメインらしい。
1時間、4時間、10時間という区切られた時間の中で、打ち込んだ玉に対して返ってくる玉(出玉)について設けた制限に変更があったという。
具体的にはパチンコの場合、1時間で打ち込んだ玉の2.2倍返しが出玉の上限として変更される。パチンコは1分間で100発打てるので、1時間で6,000発。その2.2倍=13,200発が大当りとして還元される出玉の上限になる。差玉は7,200発だ。ちなみにこれまでは3倍返しまで許可されていたという。
また、この出玉の上限値は遊技時間によって変化していき、4時間なら打ち込みの1.5倍返し、10時間なら約1.3倍返しが上限になる。
これだけを見ると一方的に出玉が抑制されたという印象を受けるが、実は今回の改正案で出玉の下限値も新たに設定された。
大当りしなくても、遊技時間が1時間なら打ち込んだ玉の3分の1の出玉を、4時間なら5分の2、10時間なら半分の返しが必要となる。これらの出玉は千円あたりの回転数・ゲーム数やパチンコなら一般入賞口からの賞球などで調整される。いわゆるベースという概念だ。
これまでは出玉の下限値は定められていなかったが、今回の改正案では確実に一定の玉を出さなければいけない内容となっている。この出玉に関する改正は「出玉を抑制する」ことが主眼ではなく「消費金額を抑えること」を目的としていると見られる。時間消費型への移行だ。
なぜ「消費金額を抑えること」が目的かというと、今回の規則改正は「依存性問題の対策」に基づくものだと明記されているからだ。
“特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律”=いわゆるIR法・カジノ法案の決議でギャンブル等依存症についての問題が議題にのぼった。公営ギャンブルは対策をやっている。
ではパチンコ・パチスロは?
パチンコ・パチスロの監督省庁である警察庁はギャンブル等依存症対策の強化として、「依存症対策に資する規則の改正」の実施を決めた。
出玉規制の話ばかりがクローズアップされるが、依存症対策の一つとして、自己申告プログラムを業界団体がレクチャーし、ホール管理者は依存症対策の責務を持つことも条文に記載されている。
「依存症対策に資する(役立つ)改正だから、言いかえれば依存症対策に資することのない部分は変わっていない」とSさんは話す。
新たな機能を付けられる
今回の規則改正案においてパチンコ・パチスロの未来を暗示する2つの内容が盛り込まれた。「封入式遊技機の可能性」と「パチンコの確率設定」。
封入式とは玉やメダルを外に出さず、機械内で循環させること。最も的確なイメージはゲームセンターに設置されているパチンコ・パチスロ機だ。
パチンコでいえば、ハンドルをひねると玉が発射され、スタートチャッカーやアタッカーなどに入賞すればそれぞれの機能を果たすが、賞球としてパチンコ玉が外部に排出されることはない。出玉や持ち玉はデジタルで表示される。
このような新しい遊技機が開発される可能性が出てきた。
具体的には改正案により「遊技球数表示装置」と呼ばれる玉数を表示する装置を付けつることが可能になり、それによって上記の封入式遊技機が実現する可能性が出てきたのだ。この改正はパチスロも同様だ。
また、パチンコはパチスロと同じように大当たり確率を6段階で設定できるようになった。この改正は、パチンコホールにおける釘の問題を払拭し、かつホール営業の自由度を増すという課題に対する一つの解決策になるだろうと考える。
今回の規則改正は、前回施行された平成17年6月1日以来12年ぶりの改正となる。
昭和63年に風俗営業法の題名に「適正化」という文言が付加された。これは取り締まりに重点を置くのではなく、その都度、変わりゆく時代に合わせて適切な処置をとるような柔軟性を備えようということだ。これにより風営法は定期的な見直しが行われる。
もともと「風俗」とはその土地に根付く文化や慣わしを意味する言葉。パチンコ・パチスロも時代に合わせて変わる必要がある。Sさんも5年、10年先を見据えて、健全な大衆娯楽に戻す必要性を感じている。「文化」として生き残るためにも。
無論、ただ時代に流されるのではない。パチンコ・パチスロ団体での協議、警察庁への要望など遊技機メーカーとしてできる最大限の活動をこなしての上で、だ。
これからの申請管理部
今回、パブリックコメントという形で改正案が出された。
申請管理部としては新たな枠組みと解釈によって新機種開発のジャッジをしなくてはならない。ただ、これまで同様に開発部とともに新しいものを作る努力をすることには変わりがない、とSさんは言う。
また一方で、現行の規則でできる機種開発も重要になってくる。商品の発売機会を損失させないよう、スムースに保通協ならびに検定への申請をするのが申請部の仕事。規則改正が正式に施行されるまでは、現行の規則で開発できる機種に市場ニーズがある。
新規則と現行規則での機種開発、当面はこの二軸で期限までひた走るようだ。
また、規則改正に関する今後のスケジュールを聞いた。
パブリックコメントの締め切りが8月9日に設定されているのを鑑みると、8月下旬に改正案についての詳細な解釈基準が発表されるのではないか、といことだ。
改正案は各項目において大枠の内容にしか触れていない。例えば「設定を付けてよい」と一口にいっても、どういうふうにどういう基準で行えばいいのかは不透明だ。そこをクリアにしてくれるのが「技術上の規格解釈基準」と呼ばれる各項目における解釈基準であり、それが8月下旬に警察庁から通知されるのでは?ということだ。
メーカーとしては、その解釈基準に沿って、社内で審議したり、業界で確認したり、あるいは警察庁に質問する。後は施行に向けて準備をするだけだ。
規則改正の施行期日は平成30年2月1日。
申請管理部の慌ただしくも熱い秋冬が到来する。
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